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元土木屋が取り組む子どもたちの里山づくり
裾野市公文名を里山として後世へ

環境
元土木屋が取り組む子どもたちの里山づくり<br>裾野市公文名を里山として後世へ
活動団体 NPO法人里山会公文名ファイブ

箱根外輪山の「三国山」(標高1,101メートル)。その西麓をフィールドに活動しているのがNPO法人「里山会公文名ファイブ」です。
裾野市公文名(くもみょう)は、緑に囲まれた山間部。一見、豊かな自然が昔からそのままに残っている場所のように感じますが、人が手を入れていかなければ、森は放置林として荒廃し、畑は雑草で覆われていきます。
「地域の宝、里山をこどもたちへ」をスローガンに、農地保全、森林保全、環境学習の活動を行っているのが、里山会公文名ファイブです。
今回は、理事長の須藤九十九(すとうつくも)さんに、これまで10数年間の取り組みや、今後の活動についてお話を伺いました。

――元土木屋が森林保全活動に

現在73歳の須藤さん。ここの活動に参加する子どもたちからの愛称は「つくちゃん」。子どもたちからすると、気さくな親戚のおじいちゃんのような存在を伺わせます。
須藤さんは元々は土木屋だったそうで、「今とは逆の自然を壊すような仕事だった。」と言います。静岡で環境学習の講座を受講したことがきっかけで、「自然を守ることに目覚めた。」そうです。
「体を動かして、うまい酒が飲めるからね。」とおどけて話しますが、子どもの頃に山で遊んだ思い出がよみがえり、今の子どもたちが大人になった時に思い出せるような里山を作りたいと、活動を始めました。

――荒廃していた森林や農地の先に目指すもの

現在、須藤さんらメンバーは、森林レクレーションを行う多目的広場やこども広場、ナメコ栽培、森林ウォーキングをする散策路、野菜や米栽培をする農地など、整備が進む場所で活動しますが、10数年前はどこも荒れ放題だったと言います。
「昭和40年代はサツマイモ畑だった。その後、スギやヒノキの人工林が植樹され、孟宗竹が繁殖していった。民間業者が保有して開発しようとしたこともあったが、うまくいかなかった。」
木が密集し、陽が入らず薄暗い森林。孟宗竹に覆われた山。担い手がなく、放置されて雑草で荒廃した農地。
そんな場所をメンバーたちと一緒に少しずつ間伐したり、雑草をとったりして手を入れてきました。そこに新たに、子どもたちと一緒に毎年50本程度の落葉広葉樹の苗木を植樹しています。
クヌギやコナラ、モミジ、エノキ、ムクゲ、ヤマボウシ、ツツジなど多種多様な苗木が植樹され、7年前に植えた木はすでに3メートルを超す高さに育っています。
いずれ、昆虫が集まり、昆虫を目当てにした野鳥が集まってくる。そんな人と動植物が共存共生する里山を目指しています。

――関係人口との「関係」が活動の原動力にも

整備が進む広場では、月に1〜2回、環境学習活動として、間伐材を使った輪切りクラフト体験や、竹細工、森の音楽会などを行っています。
小学生の時に参加した子どもが高校生になり、昨年の夏、里山に遊びに来たことがあるそうです。広場にはトイレが無いことが課題だったそうですが、学校の化学の先生を紹介してくれて、「バイオマストイレ」の指導を受け、設置を実現できたということです。
須藤さんは「たくさんの子が戻ってきてくれることまでは期待していないが、1人でも2人でも来てくれれば嬉しいね。」と笑顔で話します。

孟宗竹のチップは徐々に黒く発酵して堆肥や、バイオマストイレに使用する

また、茅ヶ崎から活動に参加した子ども連れのファミリーは、2年前に東京の移住相談窓口に来た人たちだったそうです。
須藤さんの活動を覚えていて、ホームページで親子体験活動を見て、ワークショップに参加されました。「子どもがすごく懐いてくれて嬉しかった。子どもは自然の中で遊ぶのが本当は大好き。ここで食べるごはんも格別に美味い。」と須藤さん。
「大切なのは、人が少しだけ自然に手を入れること。子どもたちには遊びを通じて、そんなことを伝えていきたい。」と期待を込めます。

――里山を未来につなぐために必要なこととは

最近では、近隣の大手企業から、里山でボランティア活動をしたいという話も届くそうです。農業大学の学生がボランティアに訪れることも。
須藤さんは、今後の活動について、「課題は人。」だと言います。
現在、里山会公文名ファイブで須藤さんと活動するのは、主に6〜7人のメンバー。須藤さんと同じく、70歳前後のメンバーが多く、活動を継続していくにはもっと若い人の力が必要だと言います。
毎週木曜日に森づくりや森林ウォーキングコースの整備を行い、週末は親子で参加する環境学習活動を行っています。
須藤さんたちメンバーと、里山の成長や自然を堪能するのも醍醐味。子どもたちの笑顔や歓声から元気をもらうのも楽しみのひとつです。
間伐材を使ったナメコや、陸ワサビの栽培や収穫体験といった、普段ではなかなかできない体験に参加することも可能です。
自然の草花を利用した野遊びや間伐材のワークショップに、子どもたちは時間も忘れて夢中になります。

今後は、クラウドファンディングを活用して、活動の認知拡大と孟宗竹をチップにする粉砕機の購入も予定しています。粉砕したチップは堆肥にし、苗木の発育に貢献します。
子どもたちを笑顔にする里山の魅力を、一人でも多くの人に体験いただければと思います。

 

 

 

(文・写真)静岡県関係人口ライター