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注目事例

個と個の出会いが生み出す「関係人口」。
これからの人と地域のつながり方

個と個の出会いが生み出す「関係人口」。<br>これからの人と地域のつながり方

「観光以上、移住未満」を指す関係人口。今、人と地域の新たなつながり方として注目されています。コロナ禍は、関係人口のあり方にどんな影響を与え、今後どんな価値をもたらすのか。関係人口に造詣の深い『ソトコト』編集長・指出一正さんに話を聞きました。

 

――コロナ禍は、私たちの働き方・暮らし方を見直すきっかけをくれました。地方回帰の流れや人々の意識の変化をどう感じていますか。

僕自身も、週6日地方を巡っていた生活から一変。地域への移動がぱたっとなくなった期間を経験しました。代わりに急浮上したのが、オンライン上でのワークショップやトークセッションです。そのような、地域の未来について意見を交わす場が増えたことで、地元を面白くしたい、自分に合った地域と出会いたい。という思いが高まっています。また、距離の制約が減った分、「関係人口」の門戸が広がったと感じています。

――そもそも「関係人口」とはどういう存在なのでしょう。

「観光以上、移住未満」「交流人口でも定住人口でもない第三の人口」として、2012年ごろから現れはじめた概念です。地域の人々と出会い、関わりを持つことに価値を感じながらも移住までは考えていない。観光客と移住定住者の間にいるすべての人を指します。
地域のコミュニティに属していなくても、すでに誰もが、関係人口的な動きをしています。例えば、静岡県のお茶に魅せられ地域を訪れるとしましょう。SNSで「静岡県**産のお茶を飲みに来ました!」と投稿すれば、それが地域の魅力発信になります。一部の友人が「私もお茶を買ってみよう」「訪れてみよう」と反応したのなら、その人はすでに静岡の関係人口になっていると思うんです。

――地域との関わりが、SNSによって多様に広がっているんですね。

そうです。さらに、コロナ禍でのオンラインのつながりが、関係人口へのハードルを下げています。地域の催し物や説明会があっても、その場に足を運ぶには時間の制約が生じます。でもオンラインなら、仕事や家事の合間に気軽に参加できる。地域との関わりを持ちたいと思っていた人は、一歩を踏み出しやすくなったのではないでしょうか。
オンラインの選択肢ができたことで、対面の価値に改めて気づいた方も多いでしょう。例えば自転車レースなどの地域イベントには、現地に足を運び、場の空気を共有することでしか味わえない価値がある。「訪れる」ことの大切さが問い直されている印象があります。

――関係人口になることで、私たちはどんな価値を得られるのでしょう。

心を寄せられる“地元”が増え、「ほかの誰でもない自分」を認識できる場所ができる。生きている実感が得られる、ともいえるかもしれません。
人口の少ないローカルでは、一人の役割が濃厚になります。30人しかいない集落にいけば、31人分の1人として「手伝ってほしい」「よく来てくれた」と求められる。縁もゆかりもなかった地元の方々が、突然、親戚のような人懐っこさで自分を認めてくれる。そんな安心感や喜びがあります。

――関係人口を広げる上で、静岡県にはどんな魅力がありますか。

一つは、こだわりのある個店の多さです。僕は、静岡県の「地域のお店デザイン表彰」の審査員長を5年務めている中で、毎年老舗店から新規店まで様々なお店を訪れています。面白い店長さんばかりで、「こんな人に出会えた!」という感動が、地域を好きになる要因になっています。関係人口の創出には、そんな「個と個の出会い」が不可欠です。
観光案内所では紹介されることのない、小さなお店やカフェ、ゲストハウスから、人のつながりができ、地域のユニークな活動やイベント情報を得られる。静岡には、人の関係が生まれ、縁を広げる起点となる「関係案内所」がたくさんあるんです。
もう一つの魅力は、東京、名古屋、大阪など大都市圏からのアクセスの良さです。新幹線の駅や空港から車で数十分の距離に、自然豊かな中山間地域がある。地域との関わりを持ちたい人にとって、日帰りや週末限定で足を運べる距離の近さは大きなメリットでしょう。
幼稚園をリノベーションして生まれた「みしま未来研究所」(三島市)や、伊豆下田の日常を写真で切り取り、SNSで発信し続ける「下田写真部」(下田市)の活動など、そこに生きる人々との出会いを生む “場”の多さが、静岡の魅力だと思います。

――アフターコロナの時代、関係人口やローカルとの向き合い方はどう変化していくと思いますか。

観光名所を効率よく回っていた旅のあり方は、すでに古い様式になっています。そのような中、自分の関心に沿ったパーソナルな旅にこそ価値が生まれはじめています。さらにコロナは、自分の回りの圏域を見直すきっかけを与えてくれました。ケータリングを機に地元の商店街に常連店ができたり、そこから別の地域コミュニティにつながっていったり。マイクロツーリズムに似た、地域内関係人口が生まれる素地ができたといえるでしょう。都心から地方に通う従来の関係人口と、ローカルtoローカルの関係人口が交錯し、出会いのポイントが増えていくことを期待しています。